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むとう有子をとりまくうるさい人たちの声


No.44
   生きる力


   岸本 ツネ

 昭和史と共に生き、それを二十年も越えて八十三歳になった私は、物心ついた時から戦争中、東京大空襲で生き地獄を体験し、戦中戦後の食糧難時代に雑草まで食べ、全く雑草の如く生き抜いて現在在ることが不思議でなりません。ひとえに両親の慈愛に守られ縁あった方々の支えがあったからだと、唯々感謝のひとことに尽きます。その方々もみな鬼籍に入りました。私もそろそろ身辺整理をし、旅立ちの心構えもと思う最近ですが、幸いなことに夫と二人で自立した生活をしています。

 今、あのころのことを顧みると、よく生き抜けたと思います。一面の焼野原に立ち、これからどうなるのかと敗戦の不安と、今日からどうやって食べていくのかと子ども心に心配になったことも思い出します。でも、人間は頼もしく、素晴らしい力があります。これからは平和国家を建設するのだという意気込みで、欠乏する物は分かち合って立ち上がったのです。希望と志と相互扶助の心があれば生きていけるのだと、今、しみじみと思います。

 ここのところ年間三万人を超す人達が自殺なさっている現実をみる時、様々な事情があるにしても、あまりに命を軽く絶つことが残念でなりません。
 戦中、立川飛行場(現昭和記念公園)から、片道の燃料で飛び立って行った若き戦士達を見送った時のその姿が脳裏から離れません。誰しも、もっと生きたかったのに、国の為、同胞を守る為に、敵艦に突入して散華した多くの方々のことを思う時、今、生きる私達は命を大切に、よりよい日本、世界、そして地球を考え、行動していかなくてはと思うのです。

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