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むとう有子をとりまくうるさい人たちの声


No.46
   後期高齢者のつぶやき


         小山 俊子

 以前、ある政党のポスターに後期高齢者医療制度廃止とあるのを見た。これは確か今回の政権交代の際の民主党のマニフェストの一項目ではなかったのか。

 しかし政権交代後は普天間基地問題、事業仕分け、その他の問題山積で、この制度廃止については先延ばしで、いずれ新しい制度に変えるということらしかった。この後期高齢者という言葉と制度の内容にも違和感を覚えている者にとっては肩すかしを喰わされた感があった。

 そもそもこの制度が突然できたときの高齢者の反響は大きかった。私も該当者として、自分が早くこの世から消え去るのを待たれているような衝撃を受けた。当時、抗議の声も多く見られ、新聞の投書の中には「ついに断崖に追い詰められた感がする」というのまであった。

 次いで送られてきた健康保険証は「後期高齢者医療保険者証」と長いタイトルがついていて、まさに自分のこの後の人生を象徴するレッテルが貼られているような気がした。知人の一人が「末期高齢者医療証でなくてよかった」と、冗談めかして言っていたのが印象に残っている。
 その後、さまざまな批判からか、これを寿医療制度とするなどと言われたが、今さら寿などと置き換えられても嬉しくないのである。

 当時、各新聞の短歌欄にもこのテーマによる作品がいくつも掲載されたので、同じ思いの短歌人がいることで意を強くしたものである。私事ながら私も当時この制度をテーマに作歌したことがある。拙い歌ではあるが、お読みいただければ幸いである。なお、仮名遣いは旧仮名を用いていることをご了承いただきたい。

   あとなき後期高齢のわれの目に
    葉桜雨に煙りてやさし

   線引きの七十五歳早過ぎないか
    平均寿命延びしと聞くに

   検診で血圧高きを指摘され後期
    高齢極まる思い

 以上、今後一日も早く高齢者にも納得のいく医療制度が確立されることを願っている。

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