区議会報告 No.38

0前へ  区議会報告トップ  次へ0

可決された主な議案より 3/21

 中野区後期高齢者医療に関する条例

むとうは反対しました

 4月から導入される後期高齢者医療制度は、小泉政権下で充分な議論もせず強行採決された医療改革法により、医療費を抑制するために作られた制度です。保険料は国民健康保険などの扶養家族であっても75歳以上の高齢者全員から徴収されます。しかも、今問題となっている年金から天引きされます。年金月額が1万5千円以下の方は天引きにはならず、自分で納めることになります。都民の平均年額保険料は約9万円です。高齢者にさらなる負担を強いるものであり、むとうは反対しました。

 東京都後期高齢者医療広域連合規約の変更について

むとうは反対しました

 変更の主な理由は、後期高齢者の保険料を軽減するために区市町村の一般会計から、さらに財政負担せよというものです。中野区では約2億円です。被保険者にとって保険料軽減は歓迎すべきことですが、これは国が行うべきことであり、区に負担を求めることではないと考え、むとうは反対しました。
       

*後期高齢者医療担当は区役所6階1番窓口

東京都後期高齢者医療広域連合規約の変更について 反対討論   全文  

 ただ今上程されました、第39号議案「東京都後期高齢者医療広域連合規約の変更について」に反対の立場から討論いたします。

 4月から導入される後期高齢者医療制度は、医療費を抑制するための制度と言えます。これまでの老人保健制度から75歳以上が切り離され、独立した医療制度となります。これについて3月14日付け朝日新聞の声の欄に以下のような投稿がありました。
 「75歳以上は「あの世に早くいけ組」に編入される感じだ。後期高齢者と呼ばれる世代は、先の大戦ではお国のため、戦後は復興に向けて懸命に生きてきた。75歳になったら、保険料も自己負担もいりません。余生をゆっくり楽しんでください。というのが本当の政治ではないか。」と、書かれていました。その通りだと私も思います。多くの高齢者の方々は、なぜ75歳での線引きなのか、なぜ負担が増えるのか、疑問を抱えたまま、4月を迎えます。中野区においては、実施される4月に入ってから、全ての地域センターで説明会を行うようですが、本来であれば、実施以前にせめて3月中には、説明をすべきでした。なお、説明会は平日の午後の時間帯のみと伺っています。説明会には、当事者だけではなく、仕事をしているご家族の方も参加が想定されますので、平日の夜、あるいは土日の開催なども考慮すべきです。お隣の練馬区では、昨年の10月から11月にかけて平日の夜や土日を含めた説明会を実施し、1月から3月末までは出前講座を実施しており、すでに約1800人に説明を行ったそうです。このように中野区は、区民に制度の周知徹底を図る姿勢が他自治体に比べて遅れていると言わざるをえません。

 ご存じのように、保険料は全国の75歳以上の高齢者全員から徴収され、健康保険や国民健康保険の扶養家族であっても一人ひとりが支払うことになります。しかも今問題となっている年金から天引きされ、強制的に徴収されます。年金が月額1万5千円より少ない方は、天引きにはならず、自分で納めることになりますが、納められない場合には、国民健康保険と同様に保険証が取り上げられるのではないかと、高齢者の方々は不安を募らせています。国保における保険料未納者は約20%であることを踏まえれば、この比率を上回る未納者が出る恐れがあります。
 先日、消えた年金5千万件の確認中の記録の中に、あなたの記録と結びつく可能性のある記録があるのでご回答下さいという年金特別便が私の元にも届きました。なるほど、結婚する前に働いていた時に納めていた厚生年金の記録がありませんでした。お陰様で名寄せができ、私自身はホットしたところですが、名寄せ中の5千万件のデータの中に、75歳以上の方がどれぐらい含まれているのか不明です。そしてそもそも年金問題の基礎処理ができていない中で年金から天引きすることは、あらたな問題を生じるのではないでしょうか。厚生労働省は、高齢者はお金持ちという先入観を持っているようで、保険料を納められない層に高齢者が多く含まれていることを考慮せずに制度設計をしており、今後予定する保険料収入が集まらないという事態に陥り、新制度の運営は厳しいものになるのではないでしょうか。そもそも2006年6月、小泉政権の下で充分な議論もせずに強行採決された医療改革法の中で、2025年までに医療給付費8兆円を削減する方策の一つとして75歳以上を後期高齢者として区分しました。そして介護保険は、医療保険の中で老人保健の部分が増大し財政を圧迫したため、それを医療保険から切り離し、医療保険を救うために作られたものです。しかし、介護保険を導入しても医療保険を救えなかったので、今度は75歳以上の高齢者を切り離して、別の医療制度として後期高齢者医療制度が作られました。はたしてそれで医療保険を救うことができるのか、医療と介護のすみ分けが整理できるのか、今後の医療のあり方は依然不透明です。
 また、後期高齢者医療制度の保険者は、ご存じのとおり都道府県と区市町村の間に、完全に独立した組織として作られた広域連合です。この広域連合は区市町村間の保険格差を是正できる利点はありますが、その運営に各区市町村はもとより東京都さえ関与できない欠点があります。

 本議案、広域連合規約の変更の主な理由は、後期高齢者の保険料を軽減するために、区市町村の一般会計から、さらに財政負担をせよというものです。すでに中野区は、後期高齢者医療費負担として、一般会計から繰出金21億9977万6千円が可決されています。本来であれば、本議案を可決した後に、本議案にともなう保険料軽減措置負担金1億8400万2千円を補正予算化すべきです。ところが、本議案が可決される以前にすでに2008年度後期高齢者医療特別会計に組み込まれていました。これは、手続上問題ではないでしょうか。練馬区では議案を可決した後に、補正予算として提案されるそうです。

 手続き論はさておき、被保険者にとって保険料軽減は歓迎すべき事ではありますが、保険料軽減はもっぱら国がすべきことであり、広域連合は国へ働きかけるべきです。また、東京都は低所得者対策のための補助はしないと明言していますが、石原知事は先の都知事選挙の時に、低所得者の負担を軽減するという公約を掲げて当選しました。しかし、当選後はその公約を都合良くお忘れになっているのでしょうか。新銀行東京の赤字に400億円も補てんするのであれば、高齢者の保険料軽減のために東京都は、国と共に補助金をだすべきです。
 日本はすでに「高負担・低福祉」社会になりつつあり、さらに「超高負担・超低福祉」になりかねない岐路に立っています。格差が拡大し、階層分化がすすむ中で、上流層は民間保険でおぎなえる一方、社会保険制度の機能は低下の一途をたどっています。そもそも社会保険は、保険料を払えない層が必ず存在することを前提とし、分厚い中流層の存在に支えられていましたが、中流層の崩壊が加速する中で、社会保険の基盤そのものが成立しなくなっているのが、現状です。一番弱い高齢者にしわ寄せがくる医療制度はさけなければなりません。国は高齢者医療と介護の問題を総合的に再構築しなければなりません。以上のような理由から、後期高齢者医療制度は廃止し再検討すべきと、私は考えます。

 なお現在、「後期高齢者医療制度を廃止する等、医療にかかる高齢者の負担の増加を回避する等のための健康保険等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」が民主、共産、社民、国民新党から衆議院に提出されている事を申し