区議会報告  No.39

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主な陳情・請願の審査結果より

どうして不採択なの?
   むとうは賛成しました
      
◎「医師・看護師などを大幅に増員するよう国に意見書の提出を求める」陳情     
  

賛成少数で不採択となりました   
 全国的に、医師・看護師不足は深刻な問題です。医療現場における過密労働の解消も急務です。国民が安心して医療を受けられるよう、国は医療・社会保障制度及び予算を拡充すべきと考え、むとうは賛成しました。

           
◎「新井保育園を民営化するにあたり建替え工事をするために園児を沼袋保育園に転園させる計画を凍結し、仮園舎を設置し新井保育園の継続を求める」陳情

賛成少数で不採択となりました
 この陳情には2030筆の署名が、また、沼袋保育園側からは新井保育園児受け入れ計画の見直しを求める要望書が1475筆の署名を添えて提出されています。このように両園の保護者が納得できない計画は一旦延期し、当事者が納得できる計画となるよう充分な話し合いを行うべきと考え、むとうは賛成しました。



◎「中野4丁目の区立新中学校(現中央中学校)予定地の南側の国家公務員宿舎予定地を取得し、校庭と公園が一続きの平地空間となることを求める」陳情

賛成少数で不採択となりました
 当初、校庭は道路に面し防災公園と一続きになる計画でした。ところが、校庭の南側に公園を遮る形で宿舎用地が入り込んできました。計画どおり宿舎が建設されれば、ビル風が吹き陽当りの悪い校庭となると予測されます。良好な環境の中学校となるよう区は国に宿舎予定地の変更を粘り強く求めるべきと考え、むとうは賛成しました。



◎「2006年度の高校歴史教科書検定結果における沖縄戦『集団自決』について、削除された日本軍による命令・強制・誘導等の表現の記述回復がなされるよう文部科学省に意見書の提出を求める」請願

賛成少数で不採択となりました
 日本軍の命令・強制・誘導による集団自決に関する記述は2006年の検定に至るまで20年間、検定を通過してきた通説です。この通説を覆すにたるものが無い中での今回の削除は、時の政府の関与がうかがえます。沖縄県議会及び県内41市町村全ての議会が検定撤回を求める意見書を採択しました。さらに沖縄県以外でも2008年2月28日現在、5府県38市4区6町の53議会が同様の意見書を採択しました。その結果、沖縄戦について一部記述回復された教科書が今春4月から使用されていますが、日本軍が集団自決を強制したという趣旨の記述は全て削除されています。歴史の事実を正しく伝えるべきと考え、むとうは賛成しました。なお、むとうはこの請願の紹介議員です。


(賛成討論全文)

 ただ今上程されました第5号請願「高校歴史教科書における集団自決の記述に関する意見書の提出について」、及び第6号請願「高校歴史教科書に関する意見書の提出について」に賛成の立場から討論いたします。

 2007年3月30日に公表された2006年度の高校教科書検定結果において、沖縄戦における住民の強制集団死、いわゆる「集団自決」について記述した全ての日本史教科書に対して検定意見が付され、日本軍の強制・誘導・関与を示す記述が全て削除されたことが判明しました。いずれの請願も、その削除された記述の回復がなされるよう文部科学省に意見書を提出することを中野区議会に求めるものです。

 いずれの請願も当初は陳情として提出されたものですが、伺うところによれば、議会の審議に「なじまない」との議会運営協議会の協議をもとに、議会運営委員会において委員会に付託がなされない事態となることが予測されました。なぜ議会の審議に「なじまない」と判断されたのか、私には理解できません。陳情者には、理事者が答えられないような議事は審議に「なじまない」との説明が、その判断に関わられた議員からなされたそうです。しかし、「なじむ」「なじまない」のようなあいまいな基準で区民の権利を制限して良いのでしょうか。区民が中野区議会としての意見書を国に提出することを求める方法として、陳情・請願はまっとうな手段です。また、区民は中野区議会にその判断を求めているのであり、理事者との質疑が成立しなくても、議員が判断をすることは充分可能です。そこで、本請願は中野区議会の審議にあたいするものであると判断し、かつ、その内容が賛同できるものであったため、紹介議員となったしだいです。

 さて、4月28日の文教委員会において、紹介議員が出席を求められ、質疑を受けました。その際、お一人の委員の方が、「議会コンサルタント」という書籍を引用され、「明らかに請願の内容が、当該地方公共団体の事務に関する事項ではないと認められる場合に於いても、形式が備わる限り憲法及び法律で保障された権利であるから受理を拒むことができない。この場合地方公共団体の権限外の事項については不採択にする外はない。」という説明文をご紹介くださいました。しかし、これはこの著者の解説であり、参考にするのはかまいませんが、中野区議会がこの解説にしばられる必然性はありません。現に沖縄県議会は2度にわたり検定撤回を求める意見書を採択し、県内41市町村全ての議会が同様の意見書を採択しています。さらに沖縄県以外でも2008年2月28日現在、5府県38市4区6町の53議会が同様の検定撤回を求める意見書を採択しました。このうち21議会が全会一致での採択です。住民の陳情・請願を採択し意見書を提出したところも9議会あります。

 また、残念ながら、私は視察日程と重なり傍聴できませんでしたが、5月22日に文教委員会が、早稲田大学学術院教授大日方純夫氏による「高校歴史教科書の沖縄戦集団自決記述について」の学習会を開催しました。
 その際の資料を読ませていただきました。この学習会を通して、日本軍の命令、強制、誘導による「集団自決」に関する記述は2006年の検定に至るまでの20年間、検定を通過してきた通説であったことを再認識できました。それがなぜ突然、検定意見が付けられて削除されることになったのか、文部科学省は責任ある説明をすべきです。
 文部科学省は、「日本軍による自決命令や強要が通説となっているが、近年の状況を踏まえると、命令があったかあきらかではない。」との検定意見を付すにあたり、事実上もっとも重要な根拠としたのは、2005年に大阪地裁に提訴された、元隊長らを原告とする裁判いわゆる「大江・岩波沖縄戦裁判」での元隊長の陳述書と推測されます。しかしその陳述書は集団自決に関わる一方の当事者の主張にすぎず、その正否について学問的検証をへたものではなく、従来の通説をくつがえすにたるものではありません。
 ましてや、これまで文部科学省が検定にあたって、係争中の裁判にかかわる事象について一方の側の主張のみを取り上げるべきではないことや、通説を書くよう教科書会社に指示していたことから大きく逸脱し矛盾するものです。さらに、2008年3月28日の大阪地裁の判決によれば、座間味島における集団自決について体験者らの体験談等は、いずれも自身の実体験に基づく話として具体性、迫真性を有するものと言え、原告の陳述書や供述には信用性に疑問があると断じ、原告らの請求は棄却されました。なお、現在高裁において控訴中です。
 また、文部科学省が検定意見を付すにあたり参考にしたとする、集団自決に関する主な著作物の著者の一人である関東学院大学教授・林博史氏は、「日本軍が住民に『米軍に捕まるな』と厳命し『いざという時は自決するように』と事前に手榴弾を配ったことは多くの証言がある。当日に部隊長が自決の命令を出したかどうかにかかわらず、全体的に見れば軍の強制そのもので、これをくつがえす研究は皆無」との反論が2007年3月31日付け琉球新報に掲載されました。以上のことより、文部科学省が検定意見に付す根拠としたと推測されるものが根底から崩れたと言えます。

 この間、検定意見の撤回と集団自決に関する記述の回復を求める沖縄県民をはじめとした歴史研究者や教育者からの抗議や、全国の自治体からの意見書などにより、2007年12月、文部科学省は教科書会社に「沖縄戦の記述についての基本的なとらえ方」を伝え、訂正申請を受け入れましたが、検定意見の撤回はなされていません。2008年4月から、訂正申請された高校歴史教科書が使用されていますが、沖縄戦について一部記述回復はなされたものの、日本軍が集団自決を強制したという趣旨の記述はすべて削除されています。つまり、訂正申請においても日本軍の強制を認めず、軍の責任をあいまいにしたことは、本質的な記述回復とは言えません。これは、歴史学者による沖縄戦研究の成果を踏みにじり、歴史的体験に根ざした沖縄県民の戦争の真実を伝えて欲しいとの願いをも踏みにじるものです。
 この度の検定過程の中で、本来は検定調査審議会が作成すべき調査意見書を、文部科学省の専任職員である教科書調査官が作成していたことが明らかとなりました。これにより、今回の検定はある政治的意図に基づいた、教育に対する政治の不当介入ではないか、などの疑問の声が沖縄を中心に全国に広がっています。このことを中野区議会としても認識しなければならないのではないでしょうか。
 この度の請願は、2007年9月29日に沖縄県民大会が開催され、教科書検定の問題が大きな世論となって巻き起こった昨年11月に提出されたものです。多くの自治体は昨年の第3回あるいは第4回定例会において、検定意見撤回を求める意見書の採択をおこないました。中野区議会においても第4回定例会で採択できれば良かったとの思いもありますが、今からでも遅くはありません。一度付されたこの度の検定意見が撤回されない限り、今後の教科書検定にもおおきな影を落とすことになります。文教委員会における大日方純夫教授による学習内容を踏まえ、同僚議員の皆様におかれましても、ご賛同いただけますよう願い、2007年第5号及び第6号請願に対する賛成討論といたします。
       


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