区議会報告 No.59

0前へ  区議会報告トップ  次へ0

可決された主な議案より 6/13

◎区立弥生福祉作業所条例の一部を改正する条例    

むとうは反対しました

 区が直営で行っている弥生福祉作業所の事業に就労移行支援を加え、作業所の業務を2014年度より指定管理者の管理とするものです。
 これにより障がい者に関する区立施設(障碍者福祉会館、上鷺こぶし園、仲町就労支援事業所、生活寮、中野・弥生福祉作業所)が全て民間の指定管理者の管理となります。 障がい者施策の充実発展のためにも、区の職員が現場を経験し熟知する必要があり、直営の施設をせめて1か所は残すべきと考え、むとうは反対しました。

◎子ども・子育て会議条例    

むとうは反対しました

 本条例は、2012年に成立した子ども・子育て支援法に基づき、子ども・子育て会議を設置するものです。
 会議の委員は、学識経験者、子育て支援関係者、保護者、公募委員等が予定されており、区民の声が反映される面もあるかもしれませんが、支援法に基づく会議体であることを認識しなければなりません。
 支援法は、子ども・子育て新システムの理念や枠組みを定めています。新システムは、保育制度を規制緩和し、保育を新たな産業として企業の参入を促進するという経済対策として構築されました。
 国の保育指針では「保育所は、保育に関する専門性を有する職員が、家庭との連携の下に、子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所における環境を通じて、養護及び教育を一体的に行うことを特性とする」とし、「養護と教育」が位置づけられています。しかし、支援法の定める保育は、家庭において保育を受けることが一時的に困難となった乳児または幼児だけを対象とし、その子たちを一時的に預かり、保護する事業とし、保育を単なる「子守り」に逆行させ、保育の質を後退させます。
 新システムは入所の前提として、保護者の労働時間による必要な保育時間の認定が必要になり、認定された保育時間を上限としたものに限定されます。基本の保育料はありますが、上乗せが可能であり、保護者がどの程度の保育料を払えるかで子どもの受ける保育に格差が生じ、保育の公的制度が崩れ、低所得の家庭や、配慮を要する障がいのある子が排除される懸念があります。また、児童福祉施設の最低基準を満たしていない狭い保育所で園庭もない賃貸スペースを容認した小規模施設や家庭的保育施設を増設し、保育資格を持たない人が簡易研修を受けただけで保育にあたる保育ママの活用など、経済効率が優先されます。幼児教育が本来担うべき良質な生育環境整備から逸脱しています。
 国は、子どもの最善の利益を保障し、豊かで良質な子育て環境を整備すべきですが、この方向性と相反する新システムの枠組みを定めている子ども・子育て支援法に基づく会議体の設置は問題と考え、むとう一人が反対しました。
  (反対討論全文は下に掲載)

      中野区子ども・子育て会議条例反対討論全文    

 第54号議案 中野区子ども・子育て会議条例に反対の立場から討論いたします。

 本条例は、2012年8月に成立した子ども・子育て支援法の第77条第1項「区は、審議会その他の合議制の機関を置くよう努めるものとする」との規定に基づき、子ども・子育て会議を設置するものです。
 子ども・子育て会議の委員は、学識経験者、子育て支援関係者、子どもの保護者、さらに公募委員などが予定されていることから、区民の声が反映される面もあるかもしれません。また、その名称からも期待しがちですが、あくまでも、子ども・子育て支援法に基づく会議体であることを認識しなければなりません。
 そしてその子ども・子育て支援法は、認定子ども園法、関連法律整備法と合わせて子ども・子育て支援関連3法の一つで、子ども・子育て新システムの基本的理念や枠組みを定めたものです。新システムの出発点は、保育環境の改善ではなく、リーマンショックで低迷する日本経済の活性化を図る目的で保育制度を規制緩和し、保育を新たな産業として企業の参入を促進するという経済対策からの議論でした。不況の中で女性の就労が増え、待機児の増加を解決するために認可保育所の整備をするのではなく、保育をサービス業化するために必要な法整備として進められました。

 そもそも、何を持って保育と言うのでしょうか。1965年に策定された国の 保育指針には「保育所の保育は、養護と教育が一体となって行うもの」と明記され、2008年の保育指針では、「保育所は、その目的を達成するために、保育に関する専門性を有する職員が、家庭との連携の下に、子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所における環境を通じて、養護及び教育を一体的に行うことを特性とする」とし、「養護と教育」がしっかり位置づけられています。つまり、幼児期の養護と教育には、明確な区分はなく、相互に関連しあいながら、子どもの発達を促すことを目的としています。
 しかし、子ども・子育て支援法には第1章総則第7条の3で「この法律において保育とは、児童福祉法第6条の3第7項に規定する保育をいう」と書かれており、驚くことに、その規定には「一時預かり事業とは、家庭において保育を受けることが一時的に困難となった乳児または幼児について、保育所その他の場所において、一時的に預かり、必要な保護を行う事業を言う」と書かれています。つまり、子ども・子育て支援法の定める保育とは、家庭において保育を受けることが一時的に困難となった乳児または幼児だけを対象とし、その子たちを一時的に預かり、保護する事業であり、常時保育園で過ごす子どもたちは、これには該当しないなどの矛盾がある上、これまでの保育方針で位置づけていた保育の定義を全く考慮せず、保育を単なる「子守り」に逆行させ、著しく保育の質を後退させるものです。

 当初、児童福祉法第24条に定められていた市区町村の保育義務を撤廃する案が示されていましたが、多くの反対の声により、保育所の入所については市区町村が保育実施責任を持つことになりました。また、保育所以外の施設においても、当分の間は、市区町村に入所申請を行うことになりました。しかし、保育所以外のその他の施設型給付施設である認定こども園(幼保連携型・保育所型・幼稚園型・地方裁量型)の4類型と幼稚園、そして地域型給付の保育施設(小規模保育・家庭的保育・居宅訪問型保育・事業所内保育)では、直接入所・直接契約・保護者への補助方式が貫かれ、保育が商品化され、サービス業に変質していく懸念が払しょくできません。基本となる保育料はありますが、職員配置が手厚いなど明確な理由があれば、保育料に上乗せ徴収が可能となります。このように或る程度の制約があるにせよ保育料の設定が自由であり、企業は最も収益が期待できる保育内容と保育料を設定することになるでしょう。保護者がどの程度の保育料を払えるかで子どもの受ける保育に格差が生じ、保育の公的制度が崩れ、低所得の家庭や、配慮を要する障がいのある子が排除される懸念があります。また、ご紹介したように保育の形が複雑怪奇となっています。
 入所の前提には、市区町村による保護者の労働時間による必要な保育時間の認定が必要になります。保育所等で受けることのできる保育は、認定された保育時間を上限としたものに限定されることになり、子どもの朝から夕方までの一日の生活を保障する場から、必要な時間だけ預かる場へと、保育所の役割が大きく変化し、教育と養護が統一されたものとしての保育所が解体されます。

 さて、先日配布された「中野区幼児研究センター調査研究報告書」には、「すべての子どもの心身の健全な成長を促すためには、幼児期から身体を動かす楽しさを感じる機会を保障することが必要である。都心に近く子どもが安心して遊べる公園が少ない中野区においては、保育園・幼稚園が子どもの身体作りに重要な役割を担っている」と報告されています。つまり、身体を動かす楽しさが感じられる空間の確保が求められています。しかし、新システムは、狭い保育所で園庭もない、児童福祉施設最低基準を満たしていない賃貸スペースを容認した小規模施設や家庭的保育施設を増設し、保育資格を持たない人が、簡易研修を受けただけで保育にあたる保育ママの活用など、経済効率が優先され、幼児教育が本来担うべき良質な生育環境整備から逸脱しているように思えてなりません。

 子ども・子育て支援関連3法は、社会保障・税の一体改革関連法案として審議され、新システムの実施により新たに必要となる財源1兆円のうち、7千億円を消費税10%の増税によって捻出することになりました。新システムの議論は、保育や幼児教育をサービス業化する経済対策としてスタートし、最後は消費税関連法案として決着がつきました。この、出口と入口に新システムの本質が現れていると言えます。
 国は、子どもの最善の利益を保障し、若者世代が子育て意欲を高め、生きがいを感じながら仕事に専念できる、豊かなで良質な子育て環境を整備すべきと考えます。しかし、この実現に向けての方向性と相反する新システムの枠組みを定めている子ども・子育て支援法に基づく会議体の設置には反対です。

 以上、第54号議案 中野区子ども・子育て会議条例に対する、反対の討論といたします。

もどる