区議会報告 No.62

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可決された主な議案より
「多選自粛条項」廃止!? 3月25日

■「自治基本条例の一部を改正する条例」が自民党・公明党・無所属(石坂議員)の24人の賛成で可決されました。共産党・民主党・無所属(むとう・近藤・奥田・林・稲垣・小宮山議員)の16人が反対、みんなの党は退席しました


  むとうは反対しました

 本条例の一部改正とは、区長の在任期間を定める「第7条の2項、活力ある区政運営を実現するため、区長の職にある者は、連続して3期を超えて在任しないよう努めるものとする。」及び「3項、前項の規定は、立候補の自由を妨げるものと解釈してはならない。」を削除するものです。 区長の任期は2期8年とする公約を掲げ田中区長は初当選し、3期までとする多選自粛条項を定め、公約を破り3選しました。今度は4期目の立候補にあたり邪魔となった多選自粛規定を削除する「改正」議案を、自治基本条例に定めのある意見交換会及びパブリック・コメント手続を経ないまま突然議会に提出することは、条例軽視どころか区政運営の私物化であり、正に権力の座に胡坐をかく長期政権の弊害を自ら証明した形です。もちろんむとうは反対しました。

 3月24日 中野北口にて
多選自粛条項廃止 に反対する署名集め


 自治基本条例 多選削除反対討論 全文

 ただ今上程されました、第27号議案「中野区自治基本条例の一部を改正する条例」に反対の立場から討論をいたします。

 思い返せば、自治基本条例制定前に、区長は、「本条例制定により、区民参加が有効に機能し、中野の自治の発展に大きく寄与する」と述べていました。しかし、2005年3月に可決された条例は、当時の自治基本条例制定ブームに乗り、条例を制定すれば先進自治体の仲間入りができるかのごとく創られたもので、事前に示されていた「条例に盛り込むべき主な項目と考え方」にあげられていた、「共同提案手続」や「区民合意による地域協定」が削除され、さらに条例の実施状況を管理する「第三者機関」の設置規定もなく、すでに行っていた参加の手続きのみを規定したにすぎないものでした。これでは、区民参加の進展も保証もできないと考え、私むとうは条例制定に反対しました。また、審議会や自治基本条例研究職員プロジェクトチームの検討報告が生かされなかったことも大変残念な記憶として残っています。

 さて、本条例の前文には「中野区における自治の基本を定めるものとして、ここに中野区自治基本条例を制定します。」と記載されています。さらに目的を定めた第1条に「この条例は、中野区の自治の基本原則を明らかにするとともに、行政運営及び区民の参加の手続等の基本的な事項について定めることにより、安心して生き生きと暮らせる地域社会を実現することを目的とする。」と規定されています。よって、本条例は「区政運営に関する基本的な方針を定めるもの」と解釈することができます。その点を踏まえて、区民参加の手続きを規定した第14条を読みますと、「『区政運営に関する基本的な方針を定めることを内容とするもの』に関する条例の制定若しくは廃止又は当該事項に係る改正の案の策定については、原則として、意見交換会及びパブリック・コメント手続を経るものとする。」と規定されています。つまり、上程されている第27号議案「中野区自治基本条例の一部を改正する条例」は、原則として、意見交換会及びパブリック・コメント手続を経なければならないものなのです。しかし、区がそれらの手続を行わないまま、議会に上程したことは、自ら制定した条例を破ることにほかなりません。地方自治体における条例とは、国の法律とは別に、地方自治体の自治立法権に基づいて制定する自主法律です。それにも関わらず、このような無茶苦茶な区政運営を許して良いのでしょうか。議会の見識も問われます。

 次に主題となる本条例の一部改正とは、区長の在任期間を定める「第7条の2項、活力ある区政運営を実現するため、区長の職にある者は、連続して3期を超えて在任しないよう努めるものとする。」及び「3項、前項の規定は、立候補の自由を妨げるものと解釈してはならない。」を削除するものです。

 自治基本条例を制定する際の審議会の答申では、「区長は、区の行政を自主的かつ総合的に実施する役割をもち、幅広い事務に関する権限をもっています。どんなに優れた人であっても、特定の人がこの権限の集中する区長の地位に長期間在任することは、自治のあり方に照らして好ましくなく、区長の在任期間は長期に及ばないことが望ましいことを確認しました。ただし、自治基本条例に盛り込む内容かどうかについては議論が分かれ、別な条例により規定する案、区長自らの姿勢として示すべきであるとの意見も出されました。」と記載されています。しかし、区民との意見交換会で、「区長の在任期間について、本条例に盛り込まなくてもいいのではないか。」との区民意見に対して、区は「審議会で、長期にわたって区長が在任することについての問題点や課題についてはきちんと議論されており、区として、本条例の中できちんと規定していくべきだと考えて提案している。」さらに「中野の自治の基本を定める条例に、区長の任期に関する努力規定を盛り込み、民主主義のより良い姿を位置づけるべきであるという判断をしている。」と回答しています。さらにパブリックコメントに対しても「区長は、区の行政を自主的かつ総合的に実施する役割をもち、幅広い事務にわたる権限を有しています。特定の者がこの権限の集中する区長の職に長期にわたり在任することは、自治の理念に照らして好ましくはないと考えます。自治体の長の在任期間について、長期にわたらないよう努力規定を設けることは、活力ある区政運営を実現するため、条例の趣旨に反していないと考えます。」さらに「他の自治体における長の在任期間の規定でも、3期としているところが多く、「2期まで」とするより「3期まで」とする方が適当であると考えます。」との区の考え方を示しています。国会でも先ごろ慰安婦問題についての当時の政府の談話の継承が問題となり、安倍総理が継承を明言したことで落ち着いたことは記憶に新しいところです。つまり、行政は継続しており、考え方を覆すのであれば、区民に対して、それなりの論拠と誠実な説明責任を果たすべきです。本議案の提出理由には「区長の在任期間に係る規定を削る必要がある。」との記載があるのみです。

 これでは、誰が聞いても「区長が4期目に立候補したくなったので、邪魔になった在任期間の記述を削る必要が出てきたのね。」と、受けとめるのが自然です。3月18日の区民と区長の対話集会でも、区長ご自身が制定した条例を、削除して4期目の立候補をすることについて、参加された区民の方々から「御都合主義だ」「道半ばというが、どんなことも新しい人が継承できる」「モラルの問題だ」などの発言があったと伺っています。

 2002年第154回国会憲法調査会地方自治に関する調査小委員会にて、片山鳥取県知事は次のように述べました。「率直に申し上げて、10年も一生懸命やってできないことは、もうできないと思います、その人には。10年一生懸命やってできることは、できていると思います。ですから、多選はよくないと私は思います。それからもう一つは、これも自分で毎日気をつけていますが、やはり権力は自己目的化します。県庁というのは一つの大統領制のもとででき上がっている組織でありますから、非常に権限の強いトップリーダーになれるわけであります。そうしますと、そのうちそれが自己目的化して、県庁のスタッフはトップのために仕事をするようになる。住民のために本来仕事をする組織の構成員であるべきところが、トップの方を向いてトップのために仕事をする。トップは役所をかばうようになる。こういう妙な組織のあり方になって、自己目的化して長期政権が続く、こういうことが随所に見られます。 ですから、私は、経験上、例えばアメリカの大統領が二期で切っているというのは、一つの経験則として英知だろうと思います。我が国の場合には、首長に多選禁止はありませんが、やはり多選についての何らかの制限があった方がいいのではないか、その方が我が国は伸びやかな社会になるのではないかという気がしてなりません。」。まさに田中区長と管理職の関係性にも当てはまるコメントです。ちなみに片山知事はお言葉通り2期でお辞めになりました。

 田中区長は、最初に立候補された際の、区長の任期は2期8年とする公約を破り3選されました。自治基本条例に盛り込んだ多選自粛規定は、2期8年とする公約を変え、3期目に立候補するための理由づけに使うためだけの、まさに時流に乗り、信念に基づかない思い付きの条項だったと言わざるを得ません。
 4期目の立候補にあたっては「多くの区民の要請」だとし、自ら制定した条例を遵守しない理由を今度は区民に転嫁し、挙句の果てには邪魔となった多選自粛規定の削除のための改正議案を、自治基本条例にのっとった意見交換会及びパブリック・コメント手続を経ないまま提出することは、条例軽視どころか区政運営の私物化であり、賛成できるわけがありません。

 顧みれば、田中区長の2期目の選挙の時には、対立候補として立候補した方が所属する団体を、区の審議会から排除し、さらにその団体が活動する区立施設を閉鎖し、区民の活動の場を奪うなど、すでに本条例「第7条 区長は、区民の信託にこたえ、区の代表者として、公正かつ誠実な行政運営を行わなければならない」との規定を逸脱していました。これら一連の田中区長の動きがまさに、権力を手にし、君臨する多選の弊害を表しています。

 以上、雑駁ではありますが、第27号議案「中野区自治基本条例の一部を改正する条例」に反対の討論といたします。
 なお、同僚議員におかれましては、私の反対討論にご賛同いただき、なにとぞ本議案に反対の意を表明されますよう、お願い申し上げます。

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