区議会報告 No.62

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可決された主な議案より 10/16


◎「個人番号の利用及び特定個人情報の提供に関する条例」


  むとうは反対しました

 行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴い、個人番号の利用範囲及び特定個人情報の提供に関し、必要な事項を定める条例です。
 共通番号制度は、全国民に12桁の個人番号と13桁の法人番号を割り振り、来年から国や自治体で、税と社会保障、災害対策の3分野での利用が始まります。国は、国民の管理・監視のツールとして使用する姿勢を押し出し、世界最高水準のIT社会実現という成長戦略に位置づけつつ、民間利用拡大を図る方向性を明らかにしています。
 条例では、法律で規定された以外の自治体独自利用の事務や、部局間で情報連携に利用する事務が規定されていますが、個人情報が名寄せされる危険が増すため、私は増やすべきではないと考えます。
 既に導入された住基ネットは、毎年全国で100億円を超える維持費をかけても、カード申請者は全国民の5%、中野区民は14%にすぎません。11桁の住基ネットコードがありながら12桁の個人番号を発行することは、まさに税金の無駄づかいであり、しかも「官民共通番号」のため危険性がさらに大きくなります。官民共通番号を導入したアメリカでは、パソコンの普及と共になりすまし犯罪が多発し、2006年からの3年間だけでも1170万件、約2兆円の被害を出し、後に国防総省職員だけは独自の番号に転換するなど、官民共通番号制度の弊害はIT先進国アメリカでも対処し切れない状況のようです。
 基礎年金番号、医療保険や介護保険などの被保険者番号、運転免許証など様々な番号が付けられて私たちは生活してきました。これらの分野別番号制度で十分事務が機能しています。名寄せしないからこそ、犯罪に遭遇しても被害が限定的だったのであり、名寄せされる個人番号では漏洩した時の被害が一層大きくなる危険と不安が払拭できず、むとうは反対しました。

★まもなく通知カードが届きますが、個人番号カードの申請は任意です。個人番号カードを持たなくても住民票などの証明書の発行はできます。

 個人番号の利用及び特定個人情報の提供に関する条例反対討論 全文

 ただ今、上程されました「第77号議案 中野区個人番号の利用及び特定個人情報の提供に関する条例」に、反対の立場から討論いたします。

本条例は「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の施行に伴い、個人番号の利用範囲及び特定個人情報の提供に関し、必要な事項を定めるものです。
 ご存知のように政府の説明では、共通番号制度は、公平・公正な社会を実現することを目的として、住民登録をしているすべての人に12桁の個人番号と13桁の法人番号を割り振り、2016年から国や自治体で、税と社会保障、災害対策の3分野での利用が始まります。 しかし実際には政府は、国民の管理・監視のツールとして使用する姿勢を押し出し、さらには世界最高水準のIT社会実現という成長戦略に位置づけつつ、民間利用拡大を図るという方向性を明らかにしています。
 政府にとってはメリットがあるのだと思いますが、共通番号制度をめぐり、厚生労働省のシステム設計契約に絡むしゅうわい容疑で厚労省職員が逮捕された事件や、取手市がシステム変更のミスにより個人番号が入った住民票を交付した事件が開始前から発生しています。一個人にとっては、個人情報が名寄せされ外部に漏洩する危険や、既に発生している、成りすましによる不正利用、国家による一元管理などのデメリットの危険と不安が払拭できません。
 2011年に政府は、番号制度の基本方針を決定した「社会保障・税番号大綱」の中で、「仮に、様々な個人情報が、本人の意思による取捨選択と無関係に名寄せされ、結合されると、本人の意図しないところで個人の全体像が勝手に形成されることになるため、個人の自由な自己決定に基づいて行動することが困難となり、ひいては表現の自由といった権利の行使についても抑制的にならざるを得ず、民主主義の危機をも招くおそれがあるとの意見を看過してはならない。」と明記しています。ここまで危険性を指摘しながら、あえて導入する共通番号制度であることを認識しなければなりません。
 本条例では、法律で規定された以外の自治体独自利用の事務や、部局間で情報連携に利用する事務が規定されていますが、個人情報が名寄せされる危険が増すため、私は増やすべきではないと考え反対します。
 また、国の法律22条では、「自治体などの情報提供機関は、情報照会機関から特定個人情報の提供を求められた場合、提供する義務を負っている」としており、本人は勿論、自治体にも提供の拒否権が認められていません。さらに職員が利用する場合、個人番号がわかるようになっていれば特定個人情報として扱われるため、扱いが非常に複雑となります。むしろ個人番号がつかないこれまでの分野別番号のほうが、職員も仕事がしやすいのではないでしょうか。
 住基ネットは、自治事務として行われ、住民票に11桁のコードをつけ、個人カードにもコードを記載せず見えない・見せないことを前提とし、自治体と国の業務に使用しましたが、毎年全国で100億円を超える維持費をかけても、カード申請者は全国民の5%、中野区民は14%にすぎませんでした。
 これに懲りた国は、個人番号の付番と個人番号カードの交付を自治体の法定受託事務とし、12桁の見える番号・見せる番号として個人番号カードに記載し、税や社会保障制度の申請に提示義務も課していきます。住基ネットの最高裁判決で、見える番号そのものを突合や照合に利用することは違憲と判断されたため、政府は個人番号のほかに符号をつけることで利用可能となる情報連携の仕組みを考え活用することを決めました。しかも膨大な経費を要する情報提供ネットワークシステムの設計・開発業者の入札は、NTTコミュニケーションズ・NTTデータ・富士通・NEC・日立製作所の5社による共同事業体1社のみの参加で、約123億円の契約という異例の事態でした。さらに番号生成システムの入札にもこの共同事業体しか参加せず、約68億円で落札しました。
 すでに住基ネットがありながら共通番号を導入するのは、「高速道路のそばにもう一本高速道路を作るようなものだ」と指摘した専門家もいます。11桁の住基ネットコードがありながら12桁の個人番号を発行することは、まさに税金の無駄づかいと言えるのではないでしょうか。
 日本年金機構の不正アクセスによる個人情報漏えい事件により、情報漏えいを前提とした対策が講じられていないことが明確になりました。共通番号制度は、「官民共通番号」のため危険性が大きいといわれています。13桁の番号を付される区内中小企業では、専用のパソコン購入や社員研修などに追われ、特に社長は特定個人情報の管理という重い責任を前に悲鳴を上げております。
 官民共通番号を1936年から導入したアメリカでは、パソコンの普及と共に、なりすまし犯罪が多発し、2006年から2008年の3年間だけでも1170万件の被害者、約2兆円の被害を出し、後に国防総省職員だけは独自の番号に転換するなど、官民共通番号制度の弊害はIT先進国アメリカでも対処し切れない状況にあるようです。
 私たちはこれまで基礎年金番号、医療保険や介護保険などの被保険者番号、運転免許証など様々な番号が付けられ生活をしてきました。これらの分野別番号制度で十分事務が機能しています。名寄せしないからこそ、犯罪に遭遇しても被害が限定的だったのであり、名寄せされる個人番号では、漏洩した時の被害が一層大きくなります。
 間もなく区内約19万世帯に通知カードの送付が開始されますが、通知カードが届いても、個人番号カードの申請は任意だということを、区民にしっかりと広報するべきと考えます。 共通番号制度は、番号法によって実施する国の事務ですが、国からの法定受託事務は、個人番号の付番と個人番号カードの交付だけであり、その他は自治事務として自治体の責任です。共通番号制度で提供される特定個人情報は、国ではなく中野区が保有する住民情報であり、その管理責任は中野区にあることを踏まえ、区民の基本的人権を守るために必要な措置を講ずることを求めて、第77号議案に対する反対討論といたします。

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