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カトマンズからの便り

 『カトマンズの水事情』

 ネパールは世界で2番目の水の豊かな国と言われている。
 しかし、皮肉なことに首都カトマンズでは飲料水の確保に困難を極めている。

 64才のバクマン・シャクヤは毎日パタンのダルバール広場で旅行者の写真リクエストに応じてポーズを取っている。彼の仕事は“水ポーター”。水を大きなポットに入れてホテルやレストランに運んでいる。
 何で水道栓をひねっても水は規則的に出ないのだろう?私たちは乾期のシーズンの4、5、6月はとても深刻だ。でも今は雨期のシーズンで助かる。「サンキュー台風!」

 カトマンズやパタンのホテルやレストランは個人的に水の確保をしている。一方、大勢の庶民はヒ素が多量に含んでいる地下水を使用している。
 「水がなければ生活ができない・・・」と嘆くのは46才のドルマ・タマン(女性)「私たちは毒のような水を飲むのは恐い。でも、代わりがないわ・・」
 それでもネパール政府発表のコメントをすべてのメディアが撒き散らしている。
 「カトマンズの水は将来衛生的になる」と。

 2015年11月までにとなりの県にあるメラムチ川から27キロメーターのトンネルをつくりカトマンズに運ぶ。このトンネル工事はイタリアの会社が現在行っている。
 MDWP(メラムチ・ドリンキング・ウオーター・プロジェクト)と称し、ネパール政府がオーストリアとインドの土木業者と調印して、またJICA(ジャイカ)からも資金援助を得て進めている。このプロジェクトが成功すればカトマンズに毎日膨大な水が供給されることになる。

 政府関係者は自信を持って話す。しかし、「その保証は十分でない」と消費者運動家のラムハリ・シュレスタは疑問を呈す。しかし「きれいな水が供給されることを期待しようではないか」とやはり楽観的に話す。

 しかし今でもネパール庶民は政府の空約束には辟易している。
 私たちは2006年、王政を打倒して今、社会変革と生活の改善を行っている。
 しかし、この国では依然、政治的不安定さがつきまとって離れないでいる。古い体質の官僚機構も何ら変わっていない。残念ながら本質的には何も変わっていないのだ。

 前々回、少しお伝えしたように最高裁のチェアマンであるレグミを首相にして政府は再構築された。現在、政党人はすべて政治の中枢から外されている。
 四大政党、つまりネパール会議派、テライ(南部の地域政党)、統一共産党、マオイスト派は11月に行う予定の憲政議会選挙の実施を支持している。彼らはレグミ内閣をあくまで暫定内閣だと信じている。

 だがマオイスト派の一派であったモホン・バイジャはこれを支持していない。この一派は選挙妨害をすることを考えている。したがって政治アナリストの中には11月に実施されるかどうか懐疑的である、と見ている。
 どの政党もそれぞれ内輪の問題解決に時間を費やしている。また選挙のためのマニフェストづくりの準備に追われている。

 一方、その地位を奪われたギャネンドラ前国王は地方視察に出掛けている。モンスーンで被害を受けた人たちにいくらかのキャッシュを与えている。
 マオイスト派のリーダーで前首相のドクター・バタライは浮かない表情で「私に力があったなら彼を刑務所に放り込む・・」とコメントした。

 雨の日、道路はぬかるみ滑りやすくなっている。
 水道栓をひねっても水は出てこない。老年の水屋バクマン・シャクヤは水の入ったポットを背負ったまま私のカメラの前に立っていた。
 パタンのダルバール広場は外国人観光客も集まり、平和でのどかな雰囲気であった。近くの公共給水場では地元の子供たちが雨水を利用して“手製の滝”をこしらえ大きな声を上げて遊んでいた。

  文と写真:ビビ・フンヤル     訳 :志鎌 誠



「メラムチ川」





「公共給水場」



     文と写真:ビビ・フンヤル 訳:志鎌 誠