区議会報告 No.102

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可決された主な議案より 3/21

むとうも賛成しました

●区議会議員の報酬及び費用弁償等に関する条例の一部を改正する条例  

 議会に出席するごとに支給する費用弁償(1日1500円)を廃止するものです。むとうも賛成しました


むとうは反対しました
●財産(区役所)の処分について 

 中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発事業に関し、区役所の建物について、都市再開発法に基づき、権利変換しない旨の申出を行い、補償金の支払いを受けるため、床面積約3038平方メートル(全床面積の6分の1)を価格4億5299万3千円で処分するものです。

 本議案は「議会の議決に付すべき財産の処分に関する条例」に規定する2千万円以上の不動産の売払いに該当するため、議会の議決に付されました。しかし建物と同様に、売払う宅地は5千平方メートル以上と規定されているため、区役所の宅地約1512平方メートルの処分は条例の対象外となり、議会の議決に付されません。

 築55年の区役所の建物価格はゼロに等しい中、4億5千万円は高価格。しかし問題は、議決の対象外である区役所の宅地を40億9309万7千円(平方メートル当たり270万円)で処分することです。

 この価格は、公示地価や路線価と比べ2分の1の低価格。完成後、事業者が示す区所有の権利床の年間想定収支額は、事務所床の95%を賃貸し、展望テラスには40万人の入場者数を見込む等で9億円との楽観的な数字。事業費は当初の1810億円から2639億円に増大。

 本議案の可決により、民間事業者任せの巨大再開発に突き進むことになります。様々な疑念が払拭できず、むとうは反対しました
(反対は、小宮山・吉田・井関・むとう)


第18号議案「財産の処分について」反対討論 全文

 ただ今上程されました第18号議案「財産の処分について」に反対の立場から討論いたします。

 本議案は、「仮称中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発事業に関し、中野区役所庁舎の建物について、都市再開発法第71条第1項の規定により権利の変換を希望しない旨の申出を行い、同法第91条第1項の規定により補償金の支払を受けるため、床面積3,038.61平方メートルを価格4億5,299万3千円で処分する」ものです。

 本議案は、「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」の第3条に規定されている「予定価格2千万円以上の不動産の売払い」に該当するため、議会の議決に付されました。

 しかし、建物と同様に、権利変換を希望しない旨の申出を行い、補償金の支払を受ける土地については、「1件5,000平方メートル以上のものに限る」と規定されているため、区役所の宅地1,512.7平方メートルの処分については、条例の対象外になるため、議会の議決に付されていません。

 現区役所は、1968年9月に竣工し、約55年が経過しています。歴史的建造物ではない築55年の建物の価格はないに等しいと推測される中、4億5,299万3千円で処分されるのは、驚きの価格です。

 しかし、問題なのは、条例の対象外になるため、議会の議決に付されていない区役所の宅地の処分価格です。中野駅周辺整備・西武新宿線沿線まちづくり調査特別委員会資料によれば、区役所の宅地1,512.7平方メートルが40億9,309万7千円で処分されるとのことです。
 割り算すると、1平方メートル当たり270万円となります。この価格については、中野区財産価格審議会を経ているので、区として妥当な金額であるとの説明でした。

 公共事業の取得価格の基準や、一般的な土地売買の際の指標となるよう適正な地価の形成に役立てるために、国土交通省が公表している公示地価があります。残念ながら、区役所現地の公示地価はありませんが、中野サンモールにある中野5の64の9の公示地価は1平方メートル当たり563万円です。

 また、国税庁が相続税や贈与税の算出のために決めている土地の価格である路線価では、中野通り沿いサンプラザ前あたりは1平方メートル当たり289万円です。路線価は公示地価の8割程度だそうです。路線価289万円をもとにした推定公示地価は361万円になります。

 さらに、土地を売買する際に、実際に取引が成立する価格である実勢価格は公示価格の1.1~1.2倍が目安とされています。推定公示地価361万円×1.2=433万円になります。とはいえ、民民による売買ではなく、市街地再開発事業ですから、これがそのまま当てはまらないことは理解できますが、270万円での処分は、安すぎるのではないかとの疑問が払拭できません。

 地方財政法第8条には「地方公共団体の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて最も効率的に、これを運用しなければならない。」と規定されています。270万円での処分が「最も効率的な運用」とは、思えません。

 本議案が可決されると、権利変換計画同意、許可申請、権利変換計画認可、転出補償金受領、施設建築物工事着工へと突き進んで行くことになります。

 示されている権利床の運用想定収支では、事務所床は95%、レストランなどの展望フロア、バンケット・コンベンションセンターや子どもの遊び場の床は97.5~100%の賃貸、展望テラスの入場者数は年間30~40万人を見込み、年間想定収支が9億円との、現実離れした楽観的な数字です。あくまで想定ですが、この想定を区に示している民間事業者に不信感が募ります。そして、この想定収支を真に受けている中野区に対しても不信感が募ります。

 これまでも主張してまいりましたが、区民の財産である駅前の一等地は手放すべきではないと考えます。市街地再開発事業による権利変換方式で進めるのではなく、70年の定期借地でも可能だとする議員有志による不動産鑑定結果をもとに定期借地権方式に改めることを求めても聞く耳を持たず、事業者募集をし、多額の国の補助金を前提とした資金計画であった事業者に決定しました。

 すでに多額の国の補助金を前提とした資金計画は見直しを強いられ、容積率を1,00%に増やし、分譲住宅戸数も1,250戸に増やし、事業費も当初の1810億円から829億円も増加し2,639億円に膨らみました。まだまだ膨らむ可能性があります。

 建設工事を主力とし、国内のオフィスビルを中心とした不動産の開発も行っている大手ゼネコン清水建設は、2月8日、2024年3月期の連結営業損益が330億円の赤字になる見通しであることを発表しました。従来予想の575億円の黒字から905億円の下振れで、営業赤字は株式上場以来初めてとなります。

 赤字の主な要因は、資材の高騰や労務費の上昇による建設コストの増加です。工事着工後にさらに事業費が増加した場合に、区の負担は一体どうなるのでしょうか、不安が増大するばかりです。

 2023年11月21日放送のNHKクローズアップ現代「駅前・高層再開発の落とし穴」の中で、明治大学の都市政策専門の野沢教授は「高く大きくからの脱却」を提言されていました。

 100年後を見据えた再開発であると、様々な場面で区は豪語していますが、100年後に老朽化した駅前の高層ビルが、1000を超える地権者の合意が得られず、建て替えが出来ず、負の遺産とならないことを祈るばかりです。

 このサンプラザ・区役所跡地の再開発が100年後を見据えた再開発だというのであれば、たとえ1年遅れても、もう一度、立ち止まり、冷静に考えるべきだと思います。

 総務委員会や中野駅周辺整備・西武新宿線沿線まちづくり調査特別委員会などの質疑の中で、様々な課題や問題点が浮き彫りとなりましたが、明快な回答は得られず、疑念を晴らすことはできていません。100年に一度の再開発であるにもかかわらず、事業者任せで、区の主体性が見えません。

 この再開発には、まちづくりの主役であるはずの区民はいません。まちは誰のためにあるのか、何のために巨大なビルを造るのか、という最も大切な議論がどこかへ消え、途中からは、事業を進めることが目的になって、区民に十分な説明がなされることなく進んでいます。
 100年に一度の再開発の場面に居合わせた一人の議員の責任として、疑念が払拭できないまま賛成することはできません。

 以上、雑駁ではありますが、第18号議案「財産の処分について」に対する反対の討論といたします。


●国民健康保険条例の一部を改正する条例

 全世帯で保険料が上がり、年金収入3百万円の2人世帯で年額2万4,177円の増額。物価高騰が続く中、値上げは避けたいと考え、むとうは反対しました
(反対は、共産・むとう)

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