区議会報告 No.29

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2006年度一般会計予算 3/13

むとうは反対しました
 税制改正により,特に低所得者や高齢者(65歳以上)を対象に増税され,特別区民税が約14億5千万円の増収となります。弱い立場に置かれていると思われる人たちからの財源増が悲しくなります。びん・缶の資源回収は民間事業者がこれまでの委託料金を下回る金額でコンテナ出し入れまでも行うことになり,行政サービスの質を変えずに報償金2200万円の経費削減ができるはずでした。しかし,この経費削減と引き換えに町会・自治会活動推進助成2600万円が新設されたことは理解できません。協働という名の下に区民と行政のもたれ合いの関係を生まないよう,任意団体への補助金はゼロ・ベースで見直すべきでした。さらに,人的配置の無いまま保育園,幼稚園,児童館,小中学校等への防犯カメラや施錠システム費2億6千万円は承服できません。安全な町づくりは,人間不信を増長する監視社会に依存すべきではなく,人間の豊かな暮らしをいかに育むかという視点から行うべきと再考を求め,むとうは反対しました。
 なお,国民健康保険事業会計・介護保険会計についても反対しました

2006年度予算 05年度予算との比較
一般会計 885億3,300万円 10億9,600万円増
国保事業会計 301億8,800万円 12億4,400万円増
介護保険会計 161億円 3億5,600万円増

(反対討論全文)
 第4号議案,2006年度中野区一般会計予算に反対の立場から討論いたします。
 予算総括質疑の中でも指摘いたしましたが,田中区政における経営改革の柱に事業部制による区政運営が据えられました。その効果を発揮する大きな手法として「各部の努力により効率的に予算執行した場合は,その努力の結果つまり執行残額の一定割合を翌々年度の予算配分枠に上乗せする」ことが決定していました。2004年度の予算編成方針にも「各部門別の決算において実質収支が生じた場合には,翌翌年度,その一定割合を当該部門が自由に活用できる財源として配分する」と明記されています。
 これは田中区長が自らの方針に基づいて決定し,田中区長ご自身の責任において各部長と約束したことです。各部の努力により実質収支が生じていたはずですので,約束通り2006年度予算に各部が自由に活用できる財源が配分されなければなりません。しかし,実際には配分されず,結局1回も実行されないうちに,この方針は消滅してしまいました。
 部長以下各職員の努力の結果を踏みにじり,区長がその責任において打ちだした決定を覆した行為は,朝令暮改のそしりを免れません。この決定は区長と職員の信頼関係を損なうのみならず,職員の意欲を低下させ,ひいては区民サービスの質の低下ヘとつながりかねません。
 元々ギリギリの予算の中で,職員の努力の結果である執行残額の一定割合というごく少額の財源配分です。顧客という捉え方にはいささか抵抗がありますが,敢えて区長の言葉をお借りすれば,顧客満足度の向上につながる財源配分であったはずです。それができないようでは,事業部制自体が失敗であったと認めたようなものです。
 2006年度予算には,2004年度予算編成方針通り,執行残額の一定割合を財源配分すべきであることを指摘いたします。
 さて,言うまでもなく2006年度予算は新しい中野をつくる10か年計画に基づく予算です。この10か年計画全体の中で「区民との協働」をどのように定義しているのか,という点が気になります。「連携・協働」という名の下に特定の区民や特定団体と行政のもたれ合いの関係を生むことになるのではとの危惧を抱いています。
 我孫子市の福嶋市長は,あるミニコミ誌のインタビュー記事の中で,『「連携」「協働」と言うけれど,本来行政がやるべきことをボランティアやNPOに任せて,コストを削減しているだけではないのか。また市民の側も,本来市民の力でやるべきものまで市が協働と言っているのだからもっとお金を出してほしい,あるいは事務所を提供してほしいなどと要求していないか。それは「協働」とは違う。「協働」とは自立した者同士に成り立つ関係だ。行政の仕事をNPOに委託したり,参加してもらうというのは所詮,税金を使った行政の仕事の中での連携だ。そうではなくて,税金を使った仕事と税金を使わない民間の事業とが対等に連携していく社会,公共をつくっていくことが「協働」の定義である』と語っておられます。
 本来,目指すべき連携・協働はこのようなことであろうと私も思います。この考えに照らしたとき,本予算に組み込まれた町会,自治会活動推進助成2600万円はいかがなものでしょうか。この助成金の発端は,びん・缶の資源回収の方法を改めたことです。ご存知のように,これまではびん・缶の資源回収のためのコンテナを区民が出し入れし,民間事業者が回収し,町会ごとに回収量を量り,年間約2200万円の報償金が町会に支払われていました。しかし,コンテナの出し入れがままならないという区民の意見もあり,事業者が町会ごとの回収量を量らずに効率のよいルートで回収することで,これまでの委託料金を下回る金額でコンテナの出し入れまでも行うことになりました。よって行政サービスの質を変えずに報償金2200万円の経費削減ができるはずでした。しかし,この経費削減と引き換えに町会・自治会活動推進助成2600万円が創設されたと思えてなりません。びん・缶資源回収方法の変更について,町会・自治会への説明会においても「報償金を上回る助成金を出すように」との意見が寄せられていることからも,推測できます。
 まずは助成金ありきで,1世帯150円とか,その内回覧代が30円であるとか,びん・缶コンテナ1ヶ所当たり1440円などはそのつじつま合わせで,その根拠に整合性ある説明がなされていません。
 1973年に「中野区における補助金等のあり方について」という答申が,中野区補助金等検討協議会から出されています。33年も前の答申ですが,その内容は現在でも十分参考となるものです。この答申を受けて,町会・自治会への補助金が廃止されたと伺っています。補助金についてはその後の答申はなく,33年前の答申が今なお引き続いているものだとするなら,いかなる理由をもって町会・自治会への助成金が復活したのか,理解できません。
 任意団体に高額な助成金を出す前に,今一度あらゆる補助金,助成金を0ベースで見直す作業をすべきでした。「連携・協働」の考え方と補助金のあり方の答申を踏まえ,町会・自治会活動推進助成は再考すべきと考えます。
 ところで,警察庁がまとめた「犯罪統計書」によれば,殺害された小学生の数は1990年代以前と比べ,人口比でもかなり減少しています。実数で見ても,1976年は100人,1982年は79人,2004年は26人です。それなのになぜ,かくも犯罪への不安が高まっているのでしょうか。現在問題になっているのは,客観的な治安悪化ではなく,あくまで体感治安というイメージの悪化にすぎません。問われているのは犯罪対策ではなく,犯罪不安対策と言われています。不安解消の対策として,現在のような治安管理強化は逆効果であると指摘する専門家もいらっしゃいます。犯罪が発生しなければ,犯罪者は存在しません。そこで登場してくる言葉が不審者です。それが定義もされず,不審者という言葉が独り歩きしていますが,不審者を見極めるのは不可能に近いと言えます。不審者を限定しようとすればするほど,人間不信を増長させ,他人とのつながりが希薄にならざるを得ません。
 もちろん,住民が地域をより住みやすく安全な場所にするために,活動することは推奨されますが,今回の予算の中の,区立,私立保育園・幼稚園,児童館,児童遊園,小中学校における,不審者発見のための防犯カメラの設置などの安全対策費2億6千万円は承服しがたい予算です。
 町中を防犯カメラで覆い尽くしているロンドンでさえ,テロを防ぐことはできませんでした。安全はがんじがらめの監視社会に頼るのではなく,人間の豊かな暮らし方をどう構築していくのかという視点から,再考すべきと考えます。
 今回の予算は区長選挙を前に,区長の政治姿勢が問われるものです。区民参加で区政を変えるということを公約にし,田中区長は当選されました。多くの区民はそこに大きな期待を寄せたはずです。しかし,田中区長のこの4年間は,果たして区民が参加し,区政を変えたと言えるでしょうか。敢えて申しあげれば,アリバイづくりの,形ばかりの区民参加でごまかし,区民の真摯な意見に耳を貸さずに,強引にご自身のお考えを押し通した4年間であったと私は思います。
 以上,第4号議案2006年度中野区一般会計予算に対する反対討論といたします。



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