区議会報告  No.64

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可決された主な議案より 10/15

◎「行政財産使用料条例」
◎「高齢者会館条例」
◎「区民活動センター条例」
◎「体育館条例」
◎「もみじ山文化の森施設条例」
◎「区民ホール及び芸能小劇場条例」
◎「産業振興センター条例」
◎「公園条例」いずれも条例の一部を改正する条例

むとうは反対しました

 3年ごとに施設使用料を改定するもので、消費税増税分も加味されており、今後消費税が10%となった場合には、さらに改定するとの答弁です。憲法で保障する健康で文化的な生活を送るためにも、身近な施設で低料金で利用できる公共サービスが求められています。全利用者から広く浅く、光熱水費や清掃費程度に抑えた算出方法に改めるべきと考え、むとうは反対しました。

◎「家庭的保育事業等の設備及び運営の基準に関する条例」
◎「特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例」

むとうは反対しました

 2012年に成立した子ども・子育て支援法の下で、来春4月から「こども・子育て支援新制度」の施行に向けて、市区町村が許可基準や運営基準を制定するものです。新制度では、幼稚園や保育所に加え、幼保連携型・保育所型・幼稚園型・地方裁量型の4種類もの認定こども園と、家庭的保育、A型・B型・C型の3種類もの小規模保育、居宅訪問型保育、保育所型と小規模型の2種類の事業所内保育の基準を示し、国は多様な保育で利用者の選択肢が増えると説明していますが、非常に複雑です。待機児対策は重要課題ですが、新制度は狭い施設で園庭もない小規模施設や家庭的保育施設を増設し、保育資格のない人が研修を受けただけで保育者になるなど、経済効率が優先され、乳幼児教育が本来担うべき良質な生育環境整備から逸脱していると考え、むとうは反対しました。


 中野区家庭的保育事業等の設備及び運営の基準に関する条例
                  反対討論 全文

 ただ今、上程されました、第60号議案「中野区家庭的保育事業等の設備及び運営の基準に関する条例」に反対の立場から討論いたします。

 この条例は、2012年に成立した子ども・子育て支援法の下で、2015年4月から「こども・子育て支援新制度」の施行に向けて、市区町村が国の定める基準を踏まえて、地域型保育事業の許可基準を制定するものです。
 そもそも、何を持って保育と言うのでしょうか。1965年に策定された国の保育指針には「保育所の保育は、養護と教育が一体となって行うもの」と明記されています。2008年の保育指針でも、「保育所は、保育に関する専門性を有する職員が、家庭との連携の下に、子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所における環境を通じて、養護及び教育を一体的に行うことを特性とする」とし、「養護と教育」がしっかり位置づけられています。
 しかし、子ども・子育て支援法には第1章総則第7条の3で「この法律において保育とは、児童福祉法第6条の3第7項に規定する保育をいう」と書かれており、驚くことに、その規定の書き出しは一時預かりとなっており「一時預かり事業とは、家庭において保育を受けることが一時的に困難となった乳児または幼児について、保育所その他の場所において、一時的に預かり、必要な保護を行う事業を言う」と書かれています。つまり、子ども・子育て支援法の定める保育とは、乳幼児を一時的に預かり、保護する事業であり、これまでの保育指針で位置づけていた保育の定義を全く考慮せず、保育を単なる「子守り」に逆行させ、著しく保育の質を後退させるものであることをまず、指摘しておきます。
 新制度では、施設型給付と位置づける幼稚園や保育所に加え、幼保連携型・保育所型・幼稚園型・地方裁量型の4種類もの認定こども園と、地域型給付と位置づける家庭的保育、A型・B型・C型と3種類にも分かれる小規模保育、居宅訪問型保育、保育所型と小規模型の2種類に分かれる事業所内保育の基準が提示されました。国はこれを、多様な保育で利用者の選択肢が増えると説明していますが、実際には非常に複雑化し、わかりにくいと言わざるを得ません。全ての子どもに保育を提供できる環境は、できるだけシンプルでわかりやすいことが求められます。
 また、地域型保育事業の中で、保育士でなければならないのは、小規模保育事業A型と保育所型事業所内保育事業のみです。半数以上は保育士とするとしているのは、小規模保育事業B型と小規模型事業所内保育事業です。つまりそれ以外の家庭的保育事業、小規模保育事業C型、居宅訪問型保育事業は、保育士資格を有しない方が保育者となります。2013年に、保育施設での死亡事故は19件発生しました。そのうち、約2万4千ある認可保育所での死亡事故は4件で、約7千ある認可外保育施設で15件と、圧倒的に認可外保育施設での死亡事故発生率が高いと言えます。このことからも、保育士の配置基準や、設備や面積基準がいかに重要かがわかります。とりわけ心配なのは、保育士資格が無いまま1対1の環境で、他の大人の目が一切ない中で保育される居宅訪問型保育事業です。今年4月に、目黒区の家庭福祉員が自宅で預かっていた生後7か月の女の子が死亡した事故は記憶に新しいことです。この乳児死亡事故を受けて、目黒区では2人体制にするなど家庭福祉員制度の見直しを行いました。保育条件や制度の違いは乳幼児の命にかかわることを十分配慮しなければなりません。
 このような状況下で、国基準に対して多数の自治体が独自の上乗せ基準での条例化を検討しているようです。例えば盛岡市では、家庭的保育で乳児2人目からの補助者配置や、小規模保育B型での3分の2の保育士配置、横須賀市では小規模保育B型と小規模型事業所内保育での4分の3以上の保育士配置などの上乗せ基準を盛り込んでいます。中野区においてもこのような保育士配置の上乗せ基準が望まれるところです。
 また、給食についても外部搬入を認め、調理室を備えない事を認めるなどは、食育の観点からも問題だと考えます。保育指針の中では、「食育基本法」を踏まえ、保育の一環として食育が位置付けられています。「保育所における食育は、健康な生活の基本としての「食を営む力」の育成に向け、その基礎を培うことを目標にし、施設長の責任のもと、保育士、調理員、栄養士、看護師などの全職員が協力し、各保育所の創意工夫のもとに食育を推進していくことが求められます。」と記されており、さらに、「子どもの保護者についても、食への理解が深まり、食事をつくること、子どもと一緒に食べることに喜びが持てるよう、調理室などの環境を活用し、食生活に関する相談・助言や体験の機会をつくることが望まれます。」。さらには「 子どもが自らの感覚や体験を通して、自然の恵みとしての食材や調理する人への感謝の気持ちが育つように、子どもと調理員との関わりや、調理室など食に関わる保育環境に配慮すること。」などと定めていた指針からも大きく後退し、調理室がある施設と無い施設とで大きな違いがでてきます。
 待機児対策は待ったなしの課題ですが、新制度は、狭い保育施設で園庭もない小規模施設や家庭的保育施設を増設し、保育資格を持たない人が、研修を受けただけで保育者になるなど、経済効率が優先され、乳幼児教育が本来担うべき良質な生育環境整備から逸脱しているように思えてなりません。

 以上、子ども・子育て支援新制度施行に向けた第60号議案「中野区家庭的保育事業等の設備及び運営の基準に関する条例」に対する反対の討論といたします。



 中野区特定教育・保育施設及び
    特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例
                反対討論 全文

 ただ今、上程されました、第61号議案「中野区特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例」に反対の立場から討論いたします。

 この条例も、2012年に成立した子ども・子育て支援法の下で、2015年4月から「こども・子育て支援新制度」の施行に向けて、特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営基準を制定するものです。
 新制度の出発点は、保育環境の改善ではなく、日本経済の活性化を図る目的で保育制度を規制緩和し、保育を新たな産業として企業の参入を促進するという、経済対策からの議論でした。不況の中で女性の就労が増え、待機児の増加を解決するために、認可保育所の整備をするのではなく、保育をサービス業化するために必要な法整備として進められてきたことを、まず、指摘しておきます。
 本条例の第5条には「支給認定保護者」とありますが、保護者は保育の必要性の認定を区から受け、その上で申し込むという2段階での煩雑な手続きとなります。さらに幼稚園などを希望し保育の必要のない3歳児以上の1号認定から、保育を必要とする満3歳以上の2号認定、0歳から2歳の3号認定まで、介護保険制度のような仕組みが子育て分野に導入されます。
 さらに第13条「利用者負担額等の受領」には、保育の質の向上を図るうえで特に必要と認められる対価について、保育料以外の様々な費用負担ができると明記されました。若い世帯に厳しい経済状況が続く中、保育料以外の様々な上乗せ徴収がこれまで以上に増加し、園によって格差が出てくることが懸念されます。
 また、第6条並びに第39条「正当な理由のない提供拒否の禁止等」において、「支給認定保護者から利用の申し込みを受けたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない」との応諾義務が規定されました。拒んでもよい正当な理由としては、1定員に空きが無い場合、2定員を上回る利用の申し込みがあった場合、3その他特別な事情がある場合と示されています。1と2は理解できますが、3における特別な事情とは何かが、未だに具体的に示されていません。
 つまり、何をもって正当な拒否理由とするかの最終判断は、各事業者が行うため、例えば、病気や障がいのある乳幼児について、施設整備や職員体制が整わないなどを正当な理由として利用申し込みを拒んだ場合などは、応諾義務から除外されることになるのではないでしょうか。今後、障がいのある乳幼児が受け入れられなくなるのではとの心配の声が上がっています。新制度創設に先立ち障がい児支援に関する国の検討会で「障がいのある子とない子が互いにふれあいの中で育ち、共に学び育っていくことが共生社会の実現につながる」との指摘がありました。まさにこれまで区立保育園が率先して障がい児も共に保育をしてきた取り組みそのものです。今後、その姿勢を民間事業者にも理解し、実践して頂かなければなりません。
 さらに第7条「あっせん、調整および要請に対する協力」では、待機児が多い自治体で混乱が予想されることを見越して「実際の利用申し込みに当たり区が行うあっせん及び要請に対し、できる限り協力しなければならない」と区の利用調整、利用要請が規定されました。しかし、利用調整は、行政手続法第2条6号の行政指導と解されるため、利用要請も事業者に保護者との直接契約を要請するにとどまるのではないかと思われます。利用者補助方式・直接契約方式を基本とするこの制度に、行政が関与できる権限は、縮小されたと言わざるを得ません。
 最後に、この制度の財源は消費税が10%に引き上げられた場合の増収分のうち、毎年7千億円程度を充てるとされています。増税を前提とし、消費税を目的税化した子ども子育て支援という政府の考え方には違和感が有ります。そうでなくとも子どもに係る日本の教育予算は先進国の中で大変低いと指摘されており、全ての子どもに安心の保育を提供する責務を持つ国が、子どもの学びや育ちを消費税増税とセットで提案すべきではありません。

 待機児対策は待ったなしの課題ですが、経済効率ばかりに目を奪われ、養護と教育という保育の本質から目をそらした子ども・子育て支援新制度の施行に向けた第61号議案「中野区特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例」に反対し、反対の討論といたします。

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