「消費生活センター条例の一部を改正する条例」
反対討論 全文 |
ただ今上程されました第96号議案「中野区消費生活センター条例の一部を改正する条例」について反対の立場から討論をいたします。
本条例改正は、新庁舎移転に伴い、消費生活センターの位置を新庁舎に改めるものです。
現在、消費生活センターは区役所の1階コンビニの右手奥の目立たない場所に位置しており、窓口には一人分の椅子が置いてあるだけです。
もしも相談者が重なった場合には、さらに奥にある相談室が使われていますが、消費者相談の大半は電話相談だと伺っています。そもそもセンターとは、総合的な機能を集めた中心的役割となる機関や施設を意味するものですが、現状は、センターとは名ばかりで、一人分のスペースの相談窓口となっています。
新庁舎に移っても、この状況は変わらず、4階に位置するとのことです。
消費生活センターは、消費者安全法に基づき、地方自治体が条例によって独自に設置しているので、その名称は、消費生活支援センターや消費者センターなど様々なものがあります。
センターの業務は、消費者被害の相談、暮らしに役立つ情報提供、消費者の自主的な活動の支援、消費者教育の推進などがあげられます。なお、センターの業務は、独立行政法人国民生活センターと連携して行われています。
中野区における消費生活センターは、51年前の1972年、区役所に消費者コーナーとして開設したのが始まりです。1981年、商工会館との複合施設として、名称を消費者センターに変更し、新井1丁目に移転。1998年、新設した環境リサイクルプラザとの複合施設として中野5丁目に移転。2011年3月、後戻りするように区役所1階に移転し、名称を消費生活センターに変更し、条例から「消費者団体支援」を削除し、現在に至っております。
区役所の外に施設が存在していた消費者センターは、消費者相談だけではなく、自主的に消費者問題に取り組む区民団体の育成と支援に力を入れ、区民が自発的に学び、交流し、実践活動をする拠点施設であり、商品テスト室も備えた、まさしくセンターと言える施設でした。
近隣区を調べてみると、杉並区、新宿区、練馬区、渋谷区は区役所外の施設として、かつての中野区消費者センターと同様の機能を備えています。豊島区は区役所内にありますが、「消費者団体活動支援」が業務内容にあります。
今年2月、一般社団法人・全国消費者団体連絡会が消費者庁長官をはじめとする国の関係機関に、「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を提出しました。その中の一つに、自治体に対して、消費者団体支援策の具体例の紹介と財政支援措置を講ずることを求めています。
全国消費者団体連絡会の調査では、
「自治体の消費者団体の育成・支援の意義や位置付けの認識が希薄になっている状況がうかがえる。地域の消費者団体の衰退は地方消費者行政の推進にも大きな影響が生じると考える。消費者市民社会の形成のため、地域の消費者が自ら学び、啓発などを発信する活動を持続的に行うには、消費者がグループ・団体として共に学び共に行動することが不可欠である。行政は、地域の消費者団体を育成し活動を支援することを通じて、地域連携による消費者被害の防止やSDGS推進の取り組みなどを持続可能な活動にしていく必要がある。このように、地域の消費者団体の活動が活発化することで消費者行政を推進する基盤となると考えられるため、消費者庁にて消費者団体の役割を再認識し、自治体に対し消費者団体支援策の具体例の紹介と財政支援措置を講ずることを求める。しかし、地域の消費者団体については、消費者庁が消費者団体基礎調査を数年ごとに実施していたが、2014年を最後に全く実施していないため、現在の消費者団体の実態が把握できていない状況にある。昨今のコロナの状況を踏まえると、各地の消費者団体の活動の衰退に拍車がかかっているとも懸念される。まずは消費者庁において、各自治体における消費者団体の実態把握と育成・支援の実情について全体的な調査を行う必要がある。」
との意見です。
この調査結果での「消費者団体の育成・支援の意義や位置付けの認識が希薄」との指摘は、まさに中野区の消費者行政そのものです。
本年第3回定例会の一般質問で私は、消費生活センターをかつての消費者センターのように、区民と共に課題を克服すべき目的を持った実践活動の場を備えた在り方の検討を求め、面積の取れない新庁舎に相談窓口だけの名ばかりのセンターではなくて、庁舎外に名実に伴うセンターの設置を求め質疑をいたしました。
しかし、区は全く意に介さず、本条例改正は、新庁舎4階に相談窓口のみを設置するためのものであり、消費者行政の衰退を招くものであると判断し、賛成することはできません。
以上、第96号議案「中野区消費生活センター条例の一部を改正する条例」についての反対討論といたします。
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