区議会報告 No.27

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主な陳情・請願の審査結果より 10/24

◎「公共工事における建設労働者の適正な労働条件確保等に関する意見書の提出を求める」陳情

採択となりました
むとうも賛成しました

 建設業は元請と下請という重層的関係の中で,労働者の賃金体系が確立しておらず,受注競争激化と公共工事減少が施工単価や労務費の引下げにつながり,労働者の生活を不安定にしています。よって建設労働者の適正な賃金・労働条件が確保されるよう「公契約法」の制定を求めるべきと考え,むとうも賛成しました



◎「児童館・学童クラブの存続を求める」陳情

どうして不採択なの?
むとうは賛成しました

 児童館は区内に28館あり,午前中は乳幼児親子保育事業,午後は学童クラブと,一日を通しての遊び場解放事業を行っています。区は乳幼児親子保育事業を民間保育園に,学童クラブと遊び場は小学校へ移し,運営を民間委託し,新しい児童館は音楽や演劇活動,子育て相談支援を行い,その運営を地域育成団体に委ねることにしています。これは,子どもの最善の利益を念頭に置いた方針とは考えられず,財政難による大人の,社会の論理で決定されたものと言わざるを得ません。改善の理念が不透明な現段階では既存の児童館と学童クラブは存続させるべきと考え,むとうは賛成しました。

(賛成討論全文)
 ただ今上程されました第68号陳情「児童館および学童クラブの存続について」賛成の立場から討論いたします。
 今から12年前の1993年地域センター部,女性,青少年課が発行した「未来へ!児童館25年のあゆみ」という冊子を改めて読み返しました。そこには,児童館開設と学童クラブ開所に至までの経緯,運営やこれからの課題が示されています。
 児童館誕生から25年の節目に,その歴史を振り返り,今までなしてきたことを検証し,これからの進むべき道を探ることが冊子づくりの目的であると記されています。この理念には職員の児童館にかける真摯で率直な熱い思いがこめられ,まさに今こそ,この原点に立ち返るべきと考えます。
 1963年,東京都が学童保育を予算化したことを新聞紙上で知った新井小学校区の住民が「一刻も早く一ヶ所でも多く学童保育を開設してほしい」との陳情を区議会に提出しました。これがきっかけとなり,翌年の1964年に上高田,桃園第三,大和,塔の山小学校の4ヶ所で「子どもクラブ」の名称で,学校の空きスペースを使っての学童保育事業が始まりました。好天の日はほとんど校庭開放で,外遊びをし,一般の子や上級生も交えドッジボールやラケット野球などでにぎやかに過ごしていたそうです。しかし,高学年の授業が終わるまではうるさくしてはいけないなど,気を遣いながら放課後までを過ごしていたとのことです。また,雨の日は狭いクラブ室で,折り紙,お絵書き,トランプ等で遊んでいましたが,当時は予算も少なく道具等の購入は困難をきわめていたそうです。かかる状況を踏まえ,1972年,学童クラブは家庭機能の部分的代替による家庭への援助と位置付けられ,学童保育事業が児童館へ移管されました。33年が経過し,今再び学童クラブを小学校に戻す方針が示されました。
 学校再編計画が進められる中,学校施設は過密になり,物理的にも子どもの居場所としての学校環境は悪化していきます。交通事故などの心配から,小学校内に学童クラブを望む声もあるようですが,子どもたちからすれば学校に10時間近くいることになり,気分転換もできません。なぜ,学童クラブを小学校に戻す必要があるのか明確な説明がなされていません。
 また,友達関係や家庭内問題などを抱えている子どももおり,学童クラブ職員が保護者や小学校の担任教師との連携を図り,子どもの立場からの解決方法を探るなど,勤務時間外においても奔走しています。単なる預かり保育ではない役割を担っているということです。この役割を民間委託で担えるとは到底思えず,人件費削減の名の下に子どもたちの保育の質の低下を看過することはできません。
 「未来へ!児童館25年の歩み」の第4章「これからの課題」には『1970年代頃から急激な,無秩序ともいえる都市化により,「遊び空間」が地域からなくなり,おけいこや塾通いなどにより「自由に遊べる時間」も無くなるとともに,「遊び仲間」の姿が地域からみえなくなりました。空間・時間・仲間・いわゆる「3つの間(ま)」の喪失現象が子ども社会に見られるようになりました。この結果,子どもたちの人間関係が希薄になり,遊びを通し学び,あるいは体験する貴重な機会が失われてきています。』と記されています。
 全国各地で,青少年が関係する事件が報道され続けていますが,その背景には人間関係に悩み,またそのことを周囲に理解され,受け入れられる機会もないまま,克服できずに苦しんできた子どもたちの覆い隠された心の存在があります。
 今,子どもたちに本当に必要なのは,心豊かに成長するための栄養です。すなわち,自由な時間を持ち,同年代の友達や異なる年齢の友達集団の中で,時にはケンカをしながらも理解しあい,共感しあうなど,切磋琢磨する時間がどうしても必要です。
 中野区の児童館は,核家族化が進展する社会状況を踏まえて,全国に先駆け,子育てに悩む乳幼児の保護者支援を積極的に展開してきた歴史を持っています。私は児童館が今後も地域ぐるみで「子どもの最善の利益」を追求すると共に,地域の子育ての拠点の一つとして,さらに積極的にその役割を担っていくことを願わずにはいられません。
 また,この冊子では1988年,国連で「子どもの権利条約」が採択されたことにも触れています。子どもの権利条約により,子どもを権利の主体と認め,自分の処遇に関することには子ども自身も関与できることとしました。その判断基準として「子どもの最善の利益」が挙げられ,親や大人や社会の都合でその処遇が決定されるのではなく,子どもにとってどうなのかという視点の重要性が唱えられています。これを踏まえ,児童館の存在を鑑みた時,現在の児童館,学童クラブの運営は,果たして「子どもの最善の利益」を追及しているかという見直しは常に必要なのではないかと,記されています。当時の職員の真摯な姿勢に感動さえ覚えます。なぜなら,現在の区の姿勢には,どうしても真摯さを感ずることができず,かつ子どもの視線が欠落しているからです。
 児童館,学童クラブに関係する子どもや保護者,そして現場を担う職員を含め,「子どもの最善の利益」を念頭に置いた議論や検討の積み重ねから導きだされた結果としての方針とはどうしても考えられません。学童クラブを小学校に設置し,運営を民間に委託する方針は,財政難という大人の,社会の論理で決定したと思わざるを得ません。
 新しい中野をつくる10か年計画改定素案に目を通しても,児童館,学童クラブの改善の理念が読み取れず,「子どもの最善の利益」に導くみち筋も示されていません。区民の理解を得ることのできる計画案を提示できない現段階では,現存する児童館と学童クラブを存続させるべきと考え,第68号陳情に対する賛成討論といたします。



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